薬物依存とSMARPP活動について(2015年01月29日)

元来、薬物依存者に必要なのは「罰」ではなく「治療」なのではないかということはたびたび指摘されてきましたが、この記事の執筆者である精神科医の松本氏も同様の見解を述べられた上で、釈放後も継続的に治療が行なえるような仕組みづくりを提案されています。

http://synodos.jp/welfare/12157

薬物依存の治療はお金のように貯めることができないため継続して通い続ける必要があり、かつ参加率を上げるためには出来るだけ各地域でそれを受けられるような環境を整える必要があるわけですが、現在は薬物依存専門の医師が少ないためにほとんどそれが行なわれていません。

それに対し松本氏が行なっておられるSMARPP(せりがや覚せい剤依存再発防止プログラム)活動では、医師資格がなくともアメリカの同様の治療メソッドと認知行動療法に基づいたマニュアルで研修を受ければ職員になることができ、依存症患者への定期的な連絡や来訪しやすい雰囲気づくりの面でも工夫がこらされ、かつ実際に継続率や他の自助プログラムへの参加の面で高い成績をあげておられるとのことです。

現在、このSMARPPをベースにしたプログラムは全国70カ所で準備中もしくは展開済みであり、また、少年院などの未成年の薬物依存患者にも2012年から試験的に実施されています。

また、なぜ犯罪者のためにそこまでコストを払わなければならないのか、という意見はあるかとは思いますが、私は、例えばある若い常習者が初犯の薬物依存から抜け出せずに人生を丸ごと駄目にしてしまうことにかかるコスト(=機会損失、治安コスト、収監費用など)や、脱法ドラッグや精神安定剤などの法的に取り締まりが難しい薬物への依存が近年増加していることなどを考えると、こういった取り組みに対して投資を行なう価値(=便益)は十分にあると思います。

薬物依存から肉体的にも社会的にも自律を取り戻し、真に自由な人生を送り直せるようになるためのこういった施策が普及して行って欲しいなと思います。

看護師と地域経済について(2014年11月23日)

これは興味深い記事でした。
日本は歴史的な経緯から関西に比べて関東の看護師の人数が足りておらず、看護学科の増設によって増やすべきであり、かつ、看護師は地方経済を考える上で鍵になるという内容です。

http://synodos.jp/welfare/11663

看護師というと一般的に福祉のカテゴリで考えられますが、経済的に捉えると、次のような興味深い事実が浮かび上がってきます。

・看護師は平均からみれば高給(サラリーマン:409万円、看護師:472万円)で、離職率も低い(7.9%)

・看護師は地元で教育を受け地元に就職し地元で過ごす傾向が強い。なので、有効な対策は看護学科の増強と労働環境の改善

・看護師は人口が多く、137万人。医師の4倍。

・地方都市では、病院は一大産業である。例えば、房総半島でもっとも多くの雇用を提供しているのは鴨川市の亀田総合病院グループで、その売り上げは鴨川市の一般会計と特別会計の合計よりも多い。

・看護師が不足すると医療事故が発生しやすくなり、理想は患者4人につき1人であることが米国と欧州の統計的に示されている。それに対して日本は7人につき1人

病気で経済活動を行なえなくなった人間を復帰させるという本来の役割の他に、看護師が高給でありかつ地方に止まって生活する傾向が強いことや、そもそもの病院の経済効果が地方において非常に重要であることがわかります。

また、私がさらに重要だとおもう点は看護師は女性の割合が多いことです(男性は5.6%)。
技能職として社会的に認知され経済的に自立した女性が増えることは、戦前において「女性教師」が女性の社会進出に重要な役割を担ってきたように、男性優位な今の社会に変化を強いるのではないかとも思います。