国交省のコンパクトシティ構想と政治(2015年01月20日)


我々が住む「市」という行政単位について、考察した面白い記事でした。都市としてのコスト削減や、コミュニティの再生などの解決策として提示されていたコンパクトシティ政策実現の困難さを政治学の立場から論じています。

http://synodos.jp/politics/6143

従来は市制において最も重要なのは「集積」でした。経済や商業の集積地である都市部に投資を行なうことはその周辺に住み労働力と消費を提供する郊外住民の利益とも一致していたものが、モータリゼーションやショッピングモールの登場などにより集積地が郊外に移動し、分散型の社会になってきた現代においてその図式は崩れつつあるという趣旨です。
そしてその上で、筆者は政治制度を改めないまま市の産業や商業地区を政治的に集積しようというコンパクトシティー構想に対して疑義を提示しています。

以下、重要な単語や概念をまとめてみます。

記事の問題設定:集積地の発展が郊外住民の利益と結びつかなくなってきた現代において市制はいかにあるべきか。
集積地:市の商業や消費が集まった経済の駆動部。しかし、地価の高止まりや技術的環境の変化(鉄道、モータリゼーション等)により人口が高止まりし、現在の人口割りの選挙制度では発言力が弱い。
郊外:労働者やその家族が住む住宅地。現在の選挙制度では多くの票を持ち、発言力が強い。
戦前の集積地:古くから歴史がある市街地。
戦後の集積地:鉄道駅周辺。
最近の集積地:より郊外の住宅地に近いショッピングモールなど(モータリゼーション)

従来の市政のメソッド:いわゆる「都市計画」。起源は人口増加と経済発展が前提となっていた戦前の市政交付(明治21年)で、人口が集中する都心部の開発を行うとともに、人々の寝所となる郊外の宅地を開発し、また、工場や貧困地域などの「悪所」を改善するというもの。

コンパクトシティ構想:地方の人口減少と市街地の空洞化への対策として、居住地域と商業施設と医療施設を都市部に集約させ、効率化と住環境の向上をはかる施策。しかし、この構想を実現するためには都市部が政治的リーダーシップを発揮しなければならないのだが、現在の選挙制度では難しい。

コンパクトシティ構想の分かりやすいイメージ
http://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/iten/service/newsletter/i_02_68_1.html

現在の市議会の選挙制度:現在の区割りが厳密にされていない大選挙区制の市議選においては、面積が広く市議の棲み分けができている郊外出身の議員に比べて面積が狭い都心部出身の議員は互いに競合しがちになり、都心部の利益を代表する安定した政治勢力は生まれづらくなってしまう。また、市議会がそういった状態であると、市の全域から票を集める市長や府県議会議員からすれば都市部の再開発よりも議会から独立して市内全域の郊外住民から広く票を集められる交通機関への投資などの政策の方がインセンティブが働くため、結果的にコンパクトシティ構想と対立する。