古市憲寿氏「だから日本はずれている」の感想(2014年09月30日)


友人に勧められて古市憲寿氏の「だから日本はずれている」を読みました。

意地悪で、刺激的で、面白い本で、読んでいて身につまされるところも多くありました。日本の低迷の原因である「おじさん」の判断の誤りはどこから来るのかの分析はある程度当たっていると思います。

自分も「おじさん」のひとりとして、古市氏のいう「ズレ」を生み出し日本を衰退のルートに乗せてしまった責任を多少なりとも負わなければならないと思いました。

古市氏が述べる「おじさん」というのは、経済成長などの幸運が重なり既得権益の仲間入りをすることができ、その恩恵を疑うことなく毎日をすごしている社会の牽引役の中高年層のことです。

経済紙がとりあげる成功例やバズワードに踊らされ、生存バイアスのことを無視して陳腐で抽象的なリーダー論や人生論をぶち、自分たちのサービスや製品の本質的価値について全く考えないまま失敗を重ねる。そんな「おじさん」達の存在のくだらなさが、入社式の際の各社の社長訓示の比較(=『創造性を発揮しろ』『国際感覚を持て』『若さを発揮し組織に飼いならされるな』等、若者に革新性を期待するくせに、どの会社でも、いつの時代も同じようなことを言う)に凝縮されているように思えました。

また、本書の後半で指摘されている、自己充足的で、ヨコのつながりを大事にし、ダウンシフトして生きて行くというかたちで社会に「抵抗」する若者達の実像は興味深いものでした。実際に私の娘達にもそこで指摘されているような傾向があることに気が付きました。

以下、ここが重要なのかなという読書メモです。

1.おじさん:いくつかの幸運(=高度成長、実家の文化資本)が重なり既得権益の仲間入りをすることができ、その恩恵を疑うことなく毎日をすごしている社会の牽引役の中高年層のこと。

2.生存バイアス:一部の「成功者」のサンプルのみに着目して間違った判断をしてしまうというバイアス。その背後に淘汰されていった失敗者が存在することを無視してしまっている。

3.ハイパーメリトクラシー:ペーパーテストのような定量的な指標ではなく、「生きる力」や「コミュニケーション力」といった定義が曖昧で個人に人格の変化を強いるような指標が重要視される潮流のこと。若者に対する抑圧であり、無責任な期待であると指摘されている。

4.J-POP:小室哲哉によって完成されたと言われている主語と目的語をはっきりさせず、語の意味を重視せずにひたすら共感を呼びそうな心理描写を並べ、「退屈な日常から抜け出す」ことを志向する美学形態。音楽だけではなく、日本の極右思想や自民党の改憲草案などもこれから逃れられていないと古市氏は指摘している。

「change my life 前世があったら 絶対に maybe stray cats 路地裏の」(安室奈美恵『sweet 19 blues』の歌詞)

5.本質的価値:それが欠けていたら他の全てが優れていても消費者が離反してしまうというような核心的価値のこと。家電の場合は「価格が適性」で「性能がよいこと」、医療の場合は「診察が上手く」「病気が治る事」。

6.ダウンシフター:高給&激務の働き方よりも給料が低くても自由な時間(=週休3日など)の確保できる働き方を優先する人々のこと。社会学者のジュリエット・ショアが提唱した言葉で意味は「減速生活者」。古市氏は、かつての「新しい村」のようないきなり共同体を立ち上げて閉鎖的な自給自足を目指す運動にくらべ、健全であり可能性があると述べている。

7.コンサマトリー:社会学用語で、日本語では「自己充足的」。「いま・ここ」にある身近な幸せを大切にする感性のこと。古市氏は現代の日本の若者の幸福度や行動原理についてこれで説明可能であると述べており、マイルドヤンキー論とも通底している。

8.ヤンキー:様々な定義があるが「ヤンキーが面白いと思う漫画は必ずヒットする」(東村アキコ)。実際に東京オリンピック誘致でもEXILEを起用するなどしてこの層にシフトしたマーケティングがなされた。

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