アベノミクスについて(2015年02月20日)


基本的に市議の仕事というのは市政の現場で育児や高齢者福祉など生活に密着した政策を遂行することで、市議会で景気や金融を議論することはないのですが、そうではあっても、私は自分たちの市や社会の未来を考えるために国家の支配的な経済政策がどのようなロジックで動いているのかを知る必要があると考えています。

今現在私が著作を読んでいる若田部昌澄氏はアベノミクスの理論的支柱といわれている「リフレ派」の経済学者の代表的論客の一人で、ノーベル経済学賞受賞者であるポール・クルーグマン氏から推薦を受けた新書が現在話題になっています。
また、少々古いですが、以下二本の記事の中でも解りやすくアベノミクスの背景の解説と評価を行なっておられます。

http://shuchi.php.co.jp/article/1495
http://shuchi.php.co.jp/article/1496

マクロ経済学の精通しているわけではないので、まだまだ咀嚼できていない部分もありますが、氏がアベノミクスが成功したのちにあるべき国のかたちとして提示されている「オープンレジーム」と「政策イノベーション」の概念の理解は市政に携わる人間にとっても重要だと思います。

以下、市政にも関わる重要な概念と経済の部分に分けて、「これだけは」と思うものを要約します。

【市政に関わる部分】

・オープンレジーム
→行政官個々人による判断や既得権益者の圧力に依拠した「裁量」よりも、新規参入者にも平等に開かれた「ルール」と「枠組み」を重視する政策思想のことです。若田部氏曰く、政策にまつわる思想はその違いから主に「オープンレジーム」と「クローズドレジーム」に分けられ、氏は前者への移行を推奨しています。
例えば、「オープンレジーム」な制度の下では産業政策は上から目線で恣意性が入りこみやすい「補助金」というかたちではなく、市場の個々のプレイヤーの自主性を重視し平等に民間側のお金を増やす「減税」という形でなされます。
また、生活困窮者への支援に関しては、現状のように役所の職員の判断によってその人の生き死にが左右されるような状態ではなく、ある一定基準を満たせば人間の判断をへずに受給の可否と受給額が決定される「負の所得税」や「ベーシックインカム」のような形態になり、市議や役所の役割も困窮者を窓口でブロックする等して見かけ上の生活保護額を減らすことではなく、どうやって生産の場への復帰を促し貧困の連鎖を断ち切るかの出口戦略に注力するという「入り口は広く、出口も広く」なかたちになるでしょう。

http://shuchi.php.co.jp/…/imag…/article/zu_wakatabe_hyo2.jpg

・政策イノベーション
政治家が注力すべきなのはあくまで規制緩和や金融政策などの政治家だけにしかできない制度面でのイノベーションであり、産業政策などの上からの介入で産業上のイノベーションを無理矢理起こそうとするような施策は控えるべきだということです。
若田部氏いわく、日本はすでに他の先進国で実施されているオープンレジームな政策の構築では大きく遅れをとっていますが、逆にいえばすでに様々なことがやり尽くされ壁に直面している欧米諸国に比べてそれだけキャッチアップの余地があるということであり、チャンスであり、職業としての「政治家」の役割は今後もっと重要になってくると言えます。

【国家経済の部分】

・デフレ
→市場に出回るマネーの量が少なすぎることで発生する貨幣現象のことです。
基本的にデフレ経済下では
1)物の価値がマネーに比べて相対的に下がるので、これから働いて稼ごうという人や消費意欲のある若者や現役世代よりもすでに資産を持っている人の方が有利である
2)現役世代の生産やイノベーションに回るような株式の購入や投資よりも、利率は低いが大量に購入すれば低リスクで安定した利益が出る国債の方が商品価値が高くなってしまう
3)商品の値段に比べて労働者の賃金は下げづらいため、企業は売値の下落による収益悪化を雇い控えや労働環境の切り詰めで対応しようとする
と言われ、90年代後半から現在に至る不景気の主原因であると言われています。

・リフレーション
→金融緩和(=日銀による国債買い入れ等)によって市場に出回るお金の量を増やし、市場の「将来的に株や資産の利率はこれくらい 上がるだろう」という予想インフレ率を上げることで、資産家や企業のムードを「溜め込みよりも投資をした方が得だ」という方向に誘導し、デフレを脱却して 景気の回復を図る経済手法です。また、景気回復による税収増と年率2%程度のルールに沿ったマイルドなインフレが起こることで、いわゆる「国の借金」も返済可能になります。

・アベノミクス
→大胆な金融緩和(=第一の矢)をやりたかった安倍首相と、財政政策(=第二の矢)がやりたかった麻生太郎氏、国家主導の成長戦略(=第三の矢)がやりたかった甘利明氏という三人の政治家の意向が合わさって出来た脱デフレのための経済レジームのことです。そして、これらのうちでリフレーションがバックボーンとなっているのは主に第一の矢です。

・リフレ派
→基本的にアベノミクスは金融緩和に強い関心を持つ安倍首相の意向で実施されたものですが、リフレーションという手法それ自体を評価する人(あるいはそれに反発する人)は与野党を問わずいらっしゃるそうです。具体的には、自民党で最古参のリフレ派は福岡7区の山本幸三氏であり、また、野党である民主党でも馬淵澄夫氏や金子洋一氏、宮崎タケシ氏などがリフレ派を自認しておられます。
また、彼らは基本的に中~低所得層を痛めつけ消費を冷え込ませる消費税増税には反対の立場です。

・若田部氏のアベノミクスに対する評価
以下の図が非常にわかりやすいのですが、リフレ派の人達は大規模な金融緩和を行なうことで「ドミノ倒し」的に消費増加や円安による輸出増加、投資の拡大が起こると想定しており、その点で第一の矢を非常に高く評価しておられます。しかし一方で、経済政策の3つの柱(*)の一つである再配分の面で、生活困窮者が保護を受けづらくなる生活保護法の改正案には重大な懸念を表明しており、またデフレ脱却後のビジョンが不明瞭であることや、今現在のリフレ政策自体が「ルール」ではなく安倍首相や黒田総裁といった個々人の意向により過ぎていることから、改良が必要であると述べられています。

http://shuchi.php.co.jp/userfiles/…/article/zu_wakatabe3.jpg

*経済政策の3つの柱
①「不況を克服する」(安定化)
②「経済成長を維持する」(効率化)
③「誰もが人並みの生活をおくるれるようにする」(所得再分配)
http://www.yomiuri.co.jp/…/wol/opinion/gover-eco_090928.html

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%8D%E3%82%AA%E3%82%A2%E3%83%99%E3%83%8E%E3%83%9F%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%81%AE%E8%AB%96%E7%82%B9-PHP%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E8%8B%A5%E7%94%B0%E9%83%A8-%E6%98%8C%E6%BE%84/dp/4569824226/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1424226401&sr=1-1&keywords=%E3%83%8D%E3%82%AA%E3%82%A2%E3%83%99%E3%83%8E%E3%83%9F%E3%82%AF%E3%82%B9