「母がしんどい」の感想(2014年10月19日)


可愛いイラストなのですが、内容自体は非常に気の滅入る、読み進めるのが大変な漫画でした。

娘の人生を自分の一部と考え、自主性もプライバシーも一切尊重せず、ことあるごとに「育ててやったんだから」という反論不能なロジックを持ち出して怒鳴りつけ、全てを押しつぶす母親。
母親を一切諌めず、育児に関わらず、最終的に「親のありがたさは親が死なないとわからない」という「呪いの言葉」を娘に送りつけ苦しめてしまう父親。
そして、ここが一番重要なのですが、娘である筆者は、本能的に自分の親が「おかしい」と分かっているものの、自分が住んでいるのが貧しいわけでも家庭崩壊にも陥っているわけでもない「普通の家庭」であることから、自分の違和感に確信が持てず、精神だけでなく性格の面でも徐々に母親に浸食されていくわけです。

自分の育児を振り返ってみると残念ながら思い当たる節があります。

私の父親不機嫌なことが多い人だったため、内心で反感を抱いていたものの自然と「父親とはそういうものだ」という感覚がみについてしまいました。初めての子ができたあとも自分が家庭で不機嫌でいても特段問題だとは考えていませんでした。

しかし、妻は私とは対照的に子供を怒鳴りつけたりしない寛容な家庭の出だったので、そういった私の態度に強く反対してくれました。紆余曲折はありましたが結果的に私は態度を改めることに成功しました。

もし妻がそれを教えてくれなかったら、自分自身が子供時代に嫌でたまらなかったことを無意識のうちに娘達に押し付けることを未だに続けていて、さらに重荷や傷を与えてしまったのではないかと背筋が寒くなりました。

wikileaksの創始者であるジュリアン・アサンジは現代の「企業」というものについて「自由主義の海に浮かんだ独裁国家の島々」と呼びましたが、意地悪ないいかたをすれば家庭もそうです。

企業にせよ家族にせよ、集団というのは、人数が少なくなればなるほど、声が大きく自分の判断力と認識に並外れた自信を持った「おかしな人」に引き摺られやすくなります。

私が子供の頃に起こった連合赤軍の総括事件はまさにそうですし、また、「家族愛」が大義名分として通ってしまいがちな日本では、尼崎市での連続殺人事件や北九州監禁殺害事件など「家庭」の中で凄惨な暴力が振るわれる事件が後を絶ちません。閉じられた集団の中で「洗脳」が当たり前のように行なわれ、暴論が当たり前のルールとして通用し、イデオロギーや「家族愛」の名の下に暴力が正当化されるという構造です。

市議候補という立場柄、どうしても「男女平等」「市政にビジネス感覚を」といった「理念」を口にするだけで「みんなの気持ちを代弁した」と気分がよくなってしまうことがあるのですが、社会というのは基本的に「家族」で分断されており、マンションや住宅街の灯りの数だけ別の世界が存在し、私が常識だと思っているものはごく限定的にしか共有されておらず、もしくは完全に私個人の妄想にすぎないのだという疑念を常に持ち続けなければならないなと思いました。

この漫画の母親の行動原理は突き詰めて言えば「優れた者(=親)は劣った者(=子)の人生に介入し引き上げてあげる権利がある」という権威主義ですが、人間の倫理観というのはそう簡単に変わる物ではありませんし、「介入」と「機会を与えつつ自主性を尊重して見守る」というリベラルな育児の境界というのは実際には非常にあいまいなので、加害者である親をどうにかするというのはほぼ不可能です。

なので、重要なのは被害者が自分の家庭を客観視して他者と「対話」をすることができる場所を与える事だと思います。

また、それは学校や職場のようにお互いが気をつかって発言に抑制がかかってしまうような場所ではなく、匿名で無責任に自分の主観を押し付けがちなネット空間でもなく、筆者が通ったクリニックや、同じ悩みを抱えた人々のコミュニティや、勉強会など、マナーをもちつつ自由に議論をする「弱いつながり」に基づいた場所であることが望ましいといえます。

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